住宅を売却した際の譲渡所得から控除できる金額について
住宅一括査定を使って住宅を売却しようとお考えの方もいらっしゃると思いますが、住宅を売却すると、その際に発生した利益(所得)に譲渡所得税が課税されますので注意が必要です。
譲渡所得を計算する際には、住宅の売却代金から取得費用と譲渡費用を控除した金額を算定し、その金額(譲渡所得)に譲渡所得税率を乗じて税額を計算します。従って、譲渡所得から控除できる取得費用と譲渡費用の2つを正確に覚えていて、それらを漏れなく売却代金から控除すれば譲渡所得税を節約することができます。
このページでは譲渡収入から控除できる取得費用と譲渡費用の2つの費用について解説します。
目次
住宅を売却した際の譲渡所得から控除できる金額について
取得費とはどんなものか
譲渡所得を計算する際に譲渡収入(売却代金)から控除できる費用の1つが売却した住宅の取得費用です。取得費用は、簡単に言えば、売却した住宅を購入する際にかかった費用のことを言います。
例えば、1,000万円で購入した住宅を1,500万円で売った場合には、単純計算で500万円の利益(譲渡所得)が出ますが、このように売った住宅を購入した時の費用は、譲渡所得を計算する際に売却代金から控除できます。
取得費は以下の①及び②のうち、いずれか高い方の金額となります。
②建物の購入費、建築代金、購入の仲介手数料、リフォーム費用、その他設備費や改良
費など、取得に要した費用の合計から、建物の減価償却費を控除した金額
新築から何十年も経過した住宅を売る場合には、その住宅費の取得の際に費用が不明となっている場合には、①の売却代金の5%を取得費として計上します。取得費が上記の①と②のいずれか高い方となっていますので、いかなるケースであっても最低限売却代金の5%は取得費として譲渡収入から控除できることになります。
取得費を計算する際の減価償却費について
売却した住宅の建築代金や購入代金等が明確に分かる場合には、それらの合計額から減価償却費を控除して取得費を計算しますが、その際の減価償却費は以下の計算式で計算します。
償却率は下表のようになります。
建物の構造等 | 耐用年数 | 償却率 |
---|---|---|
非事業用木造住宅 | 33年 | 0.031 |
非事業用軽量鉄骨住宅 | 40年 | 0.025 |
非事業用鉄筋コンクリート住宅 | 70年 | 0.015 |
事業用木造住宅 | 22年 | 0.046 |
事業用軽量鉄骨住宅 | 27年 | 0.038 |
事業用鉄筋コンクリート住宅 | 47年 | 0.022 |
例えば、非事業用の(築30年)木造住宅を売却した場合に、売却した住宅の建築総費用(1,000万円とします)から控除する減価償却費の金額は、1,000万円×90%×0.031×30=837万円となります。従って、この売却で譲渡収入から控除できる取得費の金額は1,000万円-837万円=163万円となります。
譲渡費用とはどんなものか
譲渡費用とは譲渡のために直接要した費用のことですが、この譲渡費用も、譲渡所得を計算する際に譲渡収入(売却代金)から控除することができます。
具体的に言うと、譲渡費用には次のようなものが該当します。
②登記若しくは登録に要する費用
③売買契約書に貼付した収入印紙の売主負担分
④貸家を売る際に、それまでの賃貸人に支払った立退料
⑤更地にして土地を売った場合に、土地上の建物の解体費用
⑥測量に要した費用
⑦借地権を売る時に地主に支払う名義書き換え料
⑧より良い条件で売却するために、前の契約相手に支払ったキャンセル料
住宅を売却した際に、これらの費用が発生した場合には、それらの領収証を保管しておけば、譲渡所得の計算の際に、それらの費用を譲渡収入から控除することができます。
譲渡収入から取得費と譲渡費用と控除する方法
譲渡収入から取得費と譲渡費用を控除する手続きは意外と簡単です。それは、譲渡所得の確定申告を行う際に、譲渡所得の内訳申告書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】に取得費用及び譲渡費用に関する事項を記載して、それを譲渡所得税の確定申告書に添付して税務署の窓口に提出するだけです。
その際、証拠書類として各種の支出の領収証などを税務署に提出する必要はありませんが、金額を計算する際にはそれらの書面が手元にあった方が良いでしょう。内訳書の書き方については分からなくても、領収証などの必要書面が揃っていれば、税務署の職員が指導してくれるので大丈夫です。
譲渡所得の内訳申告書については、国税庁のホームページからダウンロードで取得できますし、その書き方の手引きも同ホームページ上から閲覧することができます。住宅の売却による譲渡収入が少額の場合には、売主が自分でその内訳書を作成しても特に問題はありません。