相続した空き家を売る際に利用できる「換価分割」について
親が遠く離れた田舎に1人で住んでいて、その親が亡くなり、親の死亡後にその住宅に住む人がいないと空き家の相続が発生します。
相続人が複数いる場合には、住宅などの不動産は簡単に分割できないので、複数の相続人で空き家を相続する際にはその分活方法が問題となります。
その際に利用するとよいのが「換価分割」です。
このページでは、この「換価分割」について解説します。
目次
相続した空き家を売る際に利用できる「換価分割」についての解説
複数の相続人で空き家を相続する場合の問題点
親や兄弟が住んでいた住宅を相続したけれども、相続人の中でその住宅に居住する者がなく空き家となってしまう場合、そのまま住宅を持っていると固定資産税などの負担が生じます。
また、誰も住まない住宅は急速に劣化するので、メンテナンス費用も高くなります。
そのため、空き家を相続した場合には売却するという方法も考えられます。相続人が1人しかいない場合はよいのですが、相続人が複数いる場合には、注意すべき点がいくつかあります。
土地や建物などの不動産は、現金とは異なり簡単に分割できません。
特に空き家の場合には、相続人の1人がその空き家に住むということはありませんから、複数の相続人がいるケースでは、各相続人が一定の持分で取得することになります。
その際、玄関と客間は長男で、居間は次男で、食道と風呂は三男で、という分け方をするのは明らかに不自然です。
現在は空き家だけれども、将来的には相続人の誰かが相続した空き家に居住するという場合は別として、将来的にも相続した空き家に住む人がいないという場合には、その取扱いは難しくなります。
「換価分割」について
相続人が複数いるケースで空き家を相続した場合には、「換価分割」という方法が考えられます。
これは、相続した空き家を売却して現金化し、その現金を相続人間で分けるというものです。
土地や建物などの不動産を複数の相続人間で分割するというのは難しいですが、住宅を売却して現金に変えれば簡単に分割できます。
換価分割をする場合には、事前に被相続人から相続人への相続登記を必ずしておきます。相続登記をしないでいると、相続人のうちの1人が勝手に法定相続分で相続登記をした上で自分の持分を第三者に譲渡したうえで所有権移転登記を行えば、換価分割は不可能になります。
それを防ぐには、相続人間で代表者を1名定めてその者の単独名義で相続登記を行い、その代表者が住宅を売却し、売却代金を相続人間で分配しするという方法が考えられます。
この方法を採用する際、そのままでは代表者から各相続人に現金を配分する際、贈与税が課税されます。
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相続人の数が少ない場合には、相続人の全員が法定相続分によって相続登記を行い、相続人全員が売主となって住宅を売却し、売却代金を分配するという方法もあります。この方法だと、贈与税が問題となることはありません。
ただし、相続人の1人が勝手に自己の持分を売却しないように、事前に協定書などを作成しておくことが望ましいです。
換価分割をする際の譲渡所得税
換価分割で空き家(その敷地も含む)を売却する際にも、譲渡所得税が課税されます。空き家の相続の場合、売主が自ら購入した住宅や土地を売却するケースとは異なり、取得費用があまり高くなりませんから、空き家とその敷地が高く売れた場合には、高額な譲渡所得税の支払いが必要になることもあります。
ただし、平成28年4月1日から平成31年12月31日までに一定の要件を満たした上で、相続で取得した空き家とその敷地を売却した場合には、3,000万円の譲渡所得税の特別控除の適用を受けることができます。
この特別控除を受けるための要件は、以下のとおりです。
・被相続人が相続の直前まで居住の用に供していた住宅であること
・昭和56年5月31日以前に建築された住宅であること
・区分所有建物登記がされた住宅でないこと
・対象住宅に、相続開始以前に被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
・売却する人が相続により当該住宅を取得したこと
・対象住宅が相続開始から譲渡の時まで事業用、貸付用、居住用に使用されていないこと
・相続した空き家を取り壊し更地の状態で売却すること
・売却代金が1億円以下であること
この制度の大きなポイントは、空き家を相続した場合にその空き家を壊して更地にして土地のみを売却した場合に利用できるということです。空き家のみを売却した場合には適用されませんので注意が必要です。