相続した空き家を売る場合の譲渡所得税の特例
相続で住宅を取得したけれどもその住宅に住む予定の人がいないので、中古住宅を売却しようとされている方もいらっしゃると思います。
今回は、そのような方に向けて、相続した空き家を売却する際に発生する譲渡所得税を節約する制度について解説します。
目次
相続した空き家を売る場合の譲渡所得税の特例を解説します
相続財産を取得した場合の取得費特例
相続財産を取得した際の取得費の特例とは、相続財産(土地や建物)を取得し、その相続財産を売却する際の利益(所得)に対して課税される譲渡所得税を節約することができる特例のことを言います。
住宅を販売した際の利益に課税される譲渡所得税の金額は、譲渡所得に譲渡所得税率を乗じて計算されます。譲渡所得は、土地や建物を売った代金から取得費用と譲渡費用を控除して計算されます。
取得費とは、売った土地や建物を買い入れた時の購入代金や、購入手数料などの資産を取得した金額に、その後支出した改良費、設備費などを加えた合計額となります。
譲渡費用とは、仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、売却するときに借家人等に支払った立退料、建物を取り壊して土地を売る時の取り壊し費用などです。
相続財産を取得した場合の取得費特例とは、譲渡所得を計算する際に、相続人が支払った相続税の金額を取得費用に加算できるという制度です。
相続財産を取得した場合の取得費特例を受けるための要件
この特例を利用するための要件は、以下のとおりです。
(2)その財産を取得したものに相続税が課税されていること
(3)その財産を相続のあった日かの翌日から起算して相続税の申告期限の翌日以後3年
を経過する日までに譲渡していること
(3)について、相続税の申告期限とは、相続があったことを知った日から起算して10カ月が経過する日です。被相続人が行方不明者である場合は別として、たいてい相続は、相続があった日(被相続人が死亡した日)と相続人が相続開始を知った日は一致しますから、普通の相続は相続開始から10カ月目の日が相続税の申告期限となります。
なお、譲渡所得税の税率には短期譲渡所得税率と長期譲渡所得税率の2種類があります。短期譲渡所得税率とは、譲渡した年の1月1日において保有期間が5年以下の土地や建物を売却した場合に適用される税率で、税率は39%です。
一方、長期譲渡所得税率とは譲渡があった年の1月1日において、保有期間が5年超の土地や建物を売却した場合に適用される税率で、税率は20%となります。相続した住宅を売る場合の保有期間の計算の起算点は、相続人が相続した時ではなく被相続人が住宅を取得した時になります。
被相続人の住宅を売る場合には、住宅は古くなっているケースがほとんどなので長期譲渡所得税率が適用されるケースが多くなります。しかし、例外的に、被相続人が住宅を取得して5年以内の間に相続が発生することもあります。
取得費に加算される相続税額について
当該特例を利用すると、相続した空き家を売却する際に、相続の際に支払った相続税額を空き家の売却代金から控除することができますが、その金額は、売主が支払った相続税の全額ではありません。
取得費に加算して空き家の売却代金から控除できる金額は、売主の相続税額にその者が相続した財産の総額に対するその者が譲渡した相続した空き家の評価額の割合を乗じた金額になります。
相続した空き家を売る場合には、空き家の築年数が長くなっていることが多いのでそれほど高く売れることは少ないのですが、空き家とその敷地をセットで売る場合には、立地が良いと思わぬ高値で売却できることもあります。そのケースでは高い金額の譲渡所得税の支払いが必要になります。
1)相続税の申告書の写し
2)相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
3)譲渡所得の内訳書(土地・建物用)